振動子と秩序変数
r(t)=0.171 φ(t)=−0.653 秩序変数 r(t) の時間変化
r(t) 数値解 r=1−Kc/K 解析解 コーシー分布 g(ω)
g(ω;ω0,γ)
蔵本モデルの概要
N 体の振動子からなる蔵本モデルは次の微分方程式で表される。
dtdθi(t)=ωi+NKj=1∑Nsin(θj(t)−θi(t)),i=1,2,...,N(1)
θi,ωi は i 番目の振動子の位相と自然振動数、K は結合強度を意味する。
自然振動数 ωi は確率密度関数 g(ω) に従う。
今回のシミュレーションでは、コーシー分布 g(ω;ω0,γ) を考える。
コーシー分布の確率密度関数は、
g(ω;ω0,γ)=π1(ω−ω0)2+γ2γ
で記述される。
次に秩序変数 z を定義する。
zr(t)φ(t)=r(t)e−1φ(t)=N1i=1∑Ne−1θi(t)=(i=1∑Ncosθi(t))2+(i=1∑Nsinθi(t))2=arctan(∑i=1Ncosθi(t)∑i=1Nsinθi(t))(2)
r(t) の大きさを見ることで、振動子が同期しているかどうかが分かる。
r(t) が 1 に近いほど同期しており、0 に近いほど同期していない事を表している。
秩序変数を使って、(1) 式を次のように書き直すことができる。
dtdθi(t)=ωi+K×r(t)sin(φ(t)−θi(t))(3)
この導出は、方程式
r(t)e−1(φ(t)−θi(t))=N1j=1∑Ne−1(θj(t)−θi(t))
の虚部だけ考えると、
r(t)sin(φ(t)−θi(t))=N1j=1∑Nsin(θj(t)−θi(t))
が得られるので、これを (1) 式に代入すれば良い。
g(ω) がコーシー分布のときに、N→∞ の r(t) の値は解析的に求まることが知られている。
結果だけ以下に書いておく。
rKc=1.0−KKc(Kc<K)=2γ
導出
連続極限 N→∞ では、振動子の分布を密度関数 f(θ,ω,t) で記述する。秩序変数は
re−1φ=∫−∞∞∫02πe−1θf(θ,ω,t)dθdωと書ける。定常状態では振動子を2つのグループに分ける。
同期グループ (∣ω−ω0∣≤Kr): 位相が固定点に収束する。(3) 式の右辺を 0 とおくと
θ∗=φ+arcsin(Krω−ω0)非同期グループ (∣ω−ω0∣>Kr): 位相がドリフトし続ける。定常分布は確率保存から
f(θ,ω)=∣ω−ω0−Krsin(θ−φ)∣C(ω)秩序変数の自己無撞着方程式は、(2) 式の実部をとって
r=∫∣ω−ω0∣≤Krcos(θ∗(ω)−φ)g(ω)dωここで非同期グループの寄与は対称性から消え、同期グループのみが残る。
ω=ω0+Krsinα と変数変換すると
r=∫−π/2π/2cos2αg(ω0+Krsinα)dαコーシー分布 g(ω;ω0,γ) を代入し、Kr≫γ の近似で積分を評価すると
1=g(ω0)⋅2π⟹Kc=πg(ω0)2=2γr=0 の解が存在する条件は K>Kc=2γ であり、このとき
r=1−KKcが得られる。
数値シミュレーション
常微分方程式の数値解法の一つにオイラー法がある。
(1) 式に前進オイラー法を適用すると、
θit=θit−1+δt×{ωi+NKj=1∑Nsin(θjt−1−θit−1)}
が得られる。
θit は時刻 t における i 番目の振動子の位相、δt は時間幅である。これを愚直に実装すると、1ステップあたりの計算量は O(N2) になる。
(3) 式に前進オイラー法を適用すると、
θit=θit−1+δt×{ωi+K×r(t)sin(φ(t)−θi(t))}
が得られる。この場合、1ステップあたりの計算量は O(N) になる。
参考